ページの先頭です。
本文をスキップしてメニューを読む

淡海ネットワークセンター(Ohmi Network Center for Voluntaly Organizations)
淡海ネットワークセンターは、地域や社会の課題解決に自主的に取り組むNPOや市民活動をサポートしています。


■NPOインタビュー■ 


 芸術の秋。趣味あるいは生涯学習として、さまざまな文化活動や芸術活動にかかわっている人は多いでしょう。特定非営利活動促進法にも「学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動」が対象活動の一つとして掲げられています。でも、文化芸術活動はどちらかといえば趣味的な色彩が強く、市民活動とのつながりが今ひとつ見えてきません。今回の「おうみネット」では、文化芸術活動と市民活動の接点について、京都橘女子大学の井口貢さんにお話を伺いました。

井口 貢さん

京都橘女子大学文化政策学部助教授、滋賀県立大学環境科学部、人間文化学部兼任講師、おうみNPO活動基金審査委員。専攻は文化経済学、地域振興策、観光文化論。地域文化の固有性を生かしてまちづくりと観光振興の表裏一体となった地域活性化のあり方を研究。県内では「伊吹山を活かした観光再生委員会」(伊吹町)の座長を務めるなど、エコミュージアム型まちづくりの推進について具体的な活動を行っている。主な著書に、『文化経済学の視座と地域再創造の諸相』『観光文化の振興と地域社会』『観光文化論』など。米原町在住。

●文化芸術に関する活動というとどちらかといえば趣味性が強く、もう一つ市民活動としてのイメージをつかみにくいのですが。

井口:いわゆる市民活動や文化芸術活動の概念は広くて、なかなかそれぞれを定義づけするのは難しいのですが、イメージとして、ビジネスにおけるコミュニティビジネスの位置づけが参考になると思います。ビジネスは本来、営利を追求するものですが、その中にあってコミュニティビジネスには、地域を元気にするという目的があります。文化芸術活動にも本当に趣味的な自己満足で終わるものもありますが、やはり活動を通して他者との交流が始まり、地域の人に元気を与え、いきがいを与え、参加を促すようなもの、よい意味で地域を巻き込んでいくような活動を、市民活動としての文化芸術活動ととらえることが出来ると思います。

そういった観点でみたとき、県内の状況はどうでしょうか。

井口:私自身が湖北地方に住んでいるので、どうしてもそこに目がいくのですが、たとえば狭い意味でのアートで例を挙げると、「アート・イン・ナガハマ」(AIN)の取り組みがあります。これはアートを通してまちづくりに貢献していこうというもので、ある意味アートとは関係のなさそうな職業を持った普通の市民の方々がこの活動をつくり上げてきました。パンフレットに「『アート・イン・ナガハマ』はイベントではなく運動である」とありますが、この言葉が示すとおり、継続的な活動をするためにNPO法人も出来ました。まさに芸術活動が発展し展開した例だと思います。AINの取り組みは、これまで近寄りがたいと思われていたアートを普通の市民のレベルに持って行き、アートを用いて地域コミュニティを元気にするという、まちづくり活動という点で評価できると思います。市民活動と文化芸術活動の接点を考える場合、この取り組みは参考になると思います。
アート・イン・ナガハマの様子

湖北では文化芸術関係の活動が盛んなのですか。

井口:湖北には、長浜、米原の曳山祭りをはじめとする伝統文化が多く残っています。また、アマチュアの劇団も結構あり、彼らは市民活動を意識してやっていると思います。このほか、もともとは農村における趣味的な娯楽活動で、やっている人たちも特に市民活動を意識してやっていたわけではないが、市民や地域が強く影響を受け、今や国際的に活動している「冨田人形」のような事例もあります。湖北にはいわゆる庶民がつくり手や演じ手として守り、継承してきた文化が地域のエートスとしてあるように思います。
びわ町に受け継がれている、
富田人形

今、各地で市町村合併が進んでいますが、地域で継承されてきた文化は変わっていくのでしょうか。

井口:文化の原点は「異質性」、違いを認めることだと思います。市町村合併の中で、どのように地域文化を大切にし、連続性を守っていくか。そして、合併後の新たな地域文化をどのように構築していくかは重要です。合併がうまく進まない地域での理由として、住民の無意識の中に、地域文化の連続性に対する不安があり、それは「地域の文化を大切にしたい」という現れだったのではないかと思います。ですから、合併後のまちづくりには、その地域固有の価値に根ざした「異質性」、すなわち他地域との差異を大切にする視点というものが必要です。
 また合併により、結果として一つの自治体がいくつものホールを持つようになります。この時に、各地域のホールの果たす役割を考えなければなりません。地域文化の連続性を保つという意味からも、各ホールが特色を持った地域の文化芸術を掘り起こし、そしてその施設をうまく使いながら、その文化芸術を多くの人に支持されるようつないでいく。市民活動として文化芸術活動が認知される必要がある一方で、文化芸術活動を広げていくためにはこのような行政の施策が必要になると思います。 
 私は県の「湖国まるごとエコ・ミュージアムづくり」にも関わっているのですが、「エコ」という意味を狭い意味での「環境」だけでなく、まちづくりや生活、文化など、もっと広い意味での「環境」ととらえると、このように地域の個性にあふれる各地域のホールを琵琶湖をとりまくネックレス状につなげていくことで、滋賀県における文化芸術活動を市民活動として広げていくことができれば、面白いと思います。
旧甲南町で行われた町民手作りのミュージカル「サブロウ」

文化芸術活動を市民活動としてとらえた場合、その活動にかかわっている人自身が市民活動と思っていないことがあると思いますが。

井口:当事者が何らかの社会的な問題を意識してその解決のために行動を起こすという問題解決型の活動は、第三者からもわかりやすいし、また活動している本人自らもそう意識してやっている場合も多いと思います。そのことも重要かもしれません。ただ、「市民活動とはこうだ」と変に定義づけをし、敷居をむやみに高くしてしまうことで、却って市民活動の意味をゆがめてしまうおそれもあります。やはり大切なことは、まず自分が楽しみ、活動の結果として多くの人たちに心地よい幸せを与える。そのことは、本人が特に意識するしないにかかわらず立派な市民活動と言えるでしょう。「運動」と違って「活動」といった場合、より広く持続的に、市民に文化を享受できる可能性を開くことを意味すると思います。そういう意味で、市民活動と捉えることができると思います。自分たちがいくら「市民活動だ」と声高に言っても周りが支持しなければそれは「オタク」的な活動になってしまいます。むしろ、例えば楽器を習い始めた人が少し上達して「誰かに聴いてもらいたい」というような、軽い気持ちで取り組む方がより質の高い活動につながる可能性があるかもしれません。

文化芸術活動が市民活動として広がっていく可能性についてお聞かせ下さい

井口:文化芸術は何も有名な芸術家だけのものではなく、誰もが気軽に始められるものです。誰でも参加でき、演じ手になり、主役になれる可能性を持っていること、またそんな機会を創ることが市民活動としての文化芸術活動の役割の一つだと思います。そしてその活動を通して多くの人を心豊かにし、共感や支持を得ることができれば、市民活動として拡がっていく可能性があると思います。このことは何も文化芸術活動だけでなく、市民活動全般に言えることかもしれませんね。

ありがとうございました。


おうみネット第43号表紙へ>>   バックナンバー>>

淡海ネットワークセンター(財団法人 淡海文化振興財団)
〒520-0801 滋賀県大津市におの浜1-1-20(ピアザ淡海2F) 電話 : 077-524-8440 ファックス : 077-524-8442