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淡海ネットワークセンター(Ohmi Network Center for Voluntaly Organizations)
淡海ネットワークセンターは、地域や社会の課題解決に自主的に取り組むNPOや市民活動をサポートしています。

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10周年記念特集

おうみネットワークセンターは今年で設立10周年を迎えました。そこで、設立10周年記念特集として4回シリーズで「これからの市民活動を考える」をお届けします。まず初回となる今回は、淡海ネットワークセンターに設立当初から関わりのあるお2人に、過去〜現在の市民活動を振り返っていただきました。

北村裕明(きたむら・ひろあき)さん

滋賀大学経済学部教授。専門分野は「財政学」「非営利組織論」。著書「現代社会と非営利組織」(淡海ネットワークセンター発行)など。
阿部圭宏(あべ・よしひろ)さん

市民活動・NPOコーディネーター。NPO法人市民がささえる市民活動ネットワーク滋賀(通称:市民熱人・しみんねっと)代表など。

 

市民活動。この10年で大きく変わったことはなんですか?

阿部 まず「市民活動」という言葉が一般的になったことですね。10年前には「市民活動」はあまり使われていなかった。「NPO」も同様ですね。それが、今は「NPOって知っていますか?」と聞くと、たいていの人は「うんうん」とうなずいてくれる。市民活動もNPOもその言葉を違和感なく使えるようになった10年かな。(データ1参照


北村 私もそう思います。「市民活動」という言葉が市民権を得たこの10年だったと思います。市民の力が十分に発揮されなければ社会はうまく回っていかないことが明らかになって、発揮する手段の一つとしてNPOが非常に大切であるということが、日本社会全体で広く認識されてきたこの10年ではなかったでしょうか。

 

NPO法人数もぐんと伸びました。(データ2参照

阿部 ボランティアということでは滋賀県の数値は高いですよね。(データ3参照)また、市民活動に関わる人も確かに増えてきています。ただ、担い手という面からみると、女性が圧倒的に多く、30代、40代の男性はあまり見かけませんね。また、シニア層がかなり入り込んできています。(データ4参照

 

本当ですね。5、60代以上の割合が高いですね。

阿部 それから、特定非営利活動促進法(以後、NPO法)ができたことは、たいへん画期的だったと思います。市民活動に関する新たな法人制度ができたことで、NPOの活動の幅が広がり、次の展開を可能にしたと言えると思います。このことはとても大きですね。

北村 この法律は阪神淡路大震災が大きな引き金となってできたものです。阪神淡路大震災では、行政の限界が明らかになり、市民の力の大切さを広く社会が認識しました。その後、NPO法制定の気運は一気に高まるわけですが、それ以前1970年代からすでに市民活動的な動きはあり、80年代半ば以降になるとNPOや市民活動についての研究が市民サイドで進められていました。法制定前にこうした政策的準備がすでにあり、震災後すぐに対応できたことは極めて大きいことです。

 

滋賀県の場合はどうですか?

北村 1970年代まで遡りますが、滋賀の特徴を作り出したのは、次の大きく二つに集約されると思っています。まずは、琵琶湖保全をめぐる動きです。みなさんご存じのとおり、琵琶湖に赤潮が発生し、「これではいけない」と市民レベルで琵琶湖汚染を防止しようと「せっけん運動」が展開されました。これは、1979年の「琵琶湖富栄養化防止条例」という、有リン合成洗剤の使用・販売を禁止する制度をつくりだしましたが、こうした70年代半ば以降の琵琶湖保全の活動が、滋賀県の環境を中心とした市民活動の画期になったことは全国的にも有名です。(補足1)二つめは、これも1970年代半ば以降ですが、歴史的、文化的資源を活かしたボトムアップ※1)型の景観、まちづくりの動きです。もっとも典型的なのは、近江八幡市の八幡堀を保全し、活用しようとする活動でした。(補足2)こうした二つの特徴が今の滋賀の市民活動につながってきたと思います。

阿部 10年前ということで言えば、滋賀では「まちづくり」の活動が主流でした。滋賀はもともと自治会など地域活動が活発な県で、そこに、環境や福祉など社会の変化にともない、課題別に活動する団体がどんどん増えてきた、10年前には、市民活動を支援していく組織として、「淡海ネットワークセンター」ができ、現在の市民活動が活発になっていく大きな役割を果たしてきたと思います。

 

えっと、NPO自体はどう変わってきましたか?

阿部 NPO法ができるまでは、活動が周りに理解されにくく、もんもんとやっていた団体が、法人格をとったことがきっかけで、活動が外に開かれ、結果として成長したケースもいくつか出てきています。

北村 日本の市民活動の幅を広げ、社会的認知を獲得し、未来へ切り開いていったという点ではこの法律ができたことは決定的に大きいですね。

阿部 ただ、法人ということで言えば、いろんなNPO法人ができました。NPO法が施行された当初は、すでに活動していた団体が法人格を取得したケースが多かったので、どういう団体かはだいだい分かったのですが、今はそうした活動なしにいきなり法人をとるNPOが増えてきています。NPO、市民活動というのは、崇高なミッションを持って活動するわけで、ミッションに掲げる社会的課題の解決が一番なんです。やはり大切なのは市民活動として何をすべきかであり、その活動を見てNPOのよしあしを判断してほしいですね。

北村 阿部さんがおっしゃるように、やはり社会や地域の課題を解決していく視点こそが市民活動であってそこを見失ってはいけないんだと思います。

阿部 法人化が目的になっては困ります。法人化することによって、組織の継続性が期待されているのですが、なかなか世代交代が行われていかない場合もあります。自己完結型だけでやっているとだんだん活動は小さくなってしまいます。だからどこかと関係性を持ち、自分たちの活動を外に開いて、広げていくことが必要なんではないかと思っています。社会の期待するほど自立したNPOがまだまだ少ないと思います。

北村 NPO法によって多くの団体が生まれてきた。次の段階はこうしたNPOが地域社会を変えるため、有効に機能するためには何が必要なのか、ということが問題になってくるわけですね。そこで、僕が大切だと思うのは、本来誰が公を担っていくのかという点です。昔は地域の共同事務は家族と地域共同体が全部担っていました。それが、経済の発展に伴って、地域共同体で担えなくなった共同事務を、行政がもっぱら担うことになったのです。例えば川の管理とか。

阿部 行政がやりすぎてきた、といってもいいかなと思います。それを今、もうちょっと市民の手に返す発想でやってかないといけないのではと思います。

北村 そこで、地域の共同事務をもう一度市民が担えるようにすることが必要になってきたのです。これは市民の力だけでは限界がある、あるいはNPOだけでは無理であって、市民が担えるような仕組みづくりをしていかなければいけないということです。それが地域ガバナンス(※2を再構築するということです。行政は、地域コミュニティが十分に機能するような条件を整備することが、重要な役割となるのです。コミュニティを構成する様々な主体がもう一度自分たちの共同事務に気づき、自分たちで担えるような仕組みを数多くつくっていく必要があるわけです。

阿部 そのことが行政のスリム化にもなるし、地域力をあげる、市民力をつけることにもつながります。ここ10年で行政がNPOに関心をもってくれるようになったのは非常にいいことですね。

北村 例えば、「滋賀県風景条例」の近隣景観形成協定は、地域ガバナンスを再構築するためのすぐれた制度の一つだと思います。これは、自治会、町内会から「この地域の景観を守りたい」という申請が出されると、県と市町村がそれを公共性のある共同事務であると認めて、補助金が交付される制度です。上から押しつけるのではなく、地域を守ることは自分たちの仕事であることに気づいてもらい、その実行方法も地域自らが考え担えるようにしています。新しい共同事務を地域で担えるような仕組みとなっているわけです。

阿部 近年でいうと、「介護保険制度」(※3)や「指定管理者制度」(※4)も仕組みの一つです。しかし指定管理者制度は、まだうまく機能しているとはいえません。指定管理を出す側の行政職員が、指定管理を導入することによって、施設運営をどう変えていくのかのビジョンが描ききれていないという課題があります。

北村 指定管理者制度を市民活動を支える制度にするかしないかは、まさに指定管理を出す行政側のセンスが問われるわけですね。

阿部 ただ、行政に頼るだけではなく、市民側も自分たちの財産を自分たちが守っていく、必要なサービスは自ら生みだし、指定管理を受けていくという発想に立つ必要があります。社会を変えていくための力をNPO自身もつけていってほしいと思っています。

北村 また、企業においても近江商人の「三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)」の精神を今に引き継ぎ、世間が良くなるために、市民活動と有機的につながっていってほしいと思います。

 

他に何かありますか?

北村 NPOが地域を変えるという経験がこの10年で出てきました。この経験をふまえて、地域ガバナンスの水準を高める新しい仕組みを市民や企業や行政が、様々な分野で考え、作り出すことが大切だと思います。

 

ありがとうございました。今回は市民活動の過去から現在を振り返る「市民活動 この10年を読み解く」をお届けしました!次号は「市民活動 課題を探る〜淡海ネットワークセンター10周年記念フォーラムから」をお届けします。

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