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10周年記念特集
阪神淡路大震災時のボランティア・NPOの活躍や特定非営利活動促進法の制定をきっかけに、NPOの社会的認知はこの10年で大きく高まり、市民活動の裾野は広がってきました。では、次の10年に進むため、今振り返り考えるべきことは何か、次のステップに移るために大切なことは何なのでしょうか。
今号では、去る6月24日(日)に開催した淡海ネットワークセンター設立10周年記念フォーラムから、そして、活動を続けてこられた市民活動団体の声から、課題と今後の展望を探っていきたいと思います。
基調講演「地域と市民が織りなす これからの市民社会
川北秀人さん(IIHOE 人と組織と地球のための国際研究所 代表)
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川北秀人(かわきた・ひでと)さん IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]代表。1987年に京都大学卒業後、(株)リクルートに入社。国際採用、広報、営業支援などを担当し、91年に退職。国際青年交流NGO「オペレーション・ローリー・ジャパン」の代表や国会議員の政策担当秘書などを務め、94年にIIHOE設立。NPOや社会責任志向の企業のマネジメント、環境・社会コミュニケーションの推進を支援している。 |
市民活動は、社会や地域を良くしたいと思って始まります。その思いを叶えるには、団体は、地域を動かしたり、育てたり、変えたり、巻き込んだりというチカラを継続的にもつことが必要です。そのためにはどうすればよいのか。今回は「これまでからこれからをどう組み立てていくか」をお話したいと思います。
これまでとこれからの社会
まず、これまでを確認しましょう。表1のような変化がありました。全国のNPO法人数は3万を超え、協働が本格化し、企業や行政と連携することが当たり前になってきました。また、介護保険など市民が先行して仕組みづくりしてきたものが制度化されたり、NPOが契約の主体になってきたことは大きな変化といえます。先ほど、法人数のお話をしましたが、月次法人申請数は2005年から2006年にかけてピークを過ぎています。NPO法も10年目を迎え、真価が問われる時期に入っています。
これからの社会はどうなっていくのでしょうか。表2をみてください。かなり厳しい時代がきます。冗談ではなく行政にお金がないことはよく分かっていただけたでしょうか。行政依存型の市民活動団体は今後を見据えた準備が必要であり、会費・寄付・事業収入といった自主財源率を高める努力が求められます。また、ISO26000(組織の社会的責任に関する国際ガイダンス規格)が2009年に発効します。CSR(企業の社会的責任)のC(企業)がとれ、企業に限らず社会の一員である全ての組織(NPOも病院も大学も労働組合も行政も)の社会的責任(=SR)に関するガイドラインができます。NPOも自分たちの責任をどう果たしていくか、について説明できないといけない時代がやってきます。
表1
●これまでの15年(1992年〜2006年)
◇様々な主体(官・業vs民)の対立から協働への変化。
◇インターネットの普及により、コミュニケーションが早く安く。
◇阪神・淡路大震災により、ボランティアの存在感が認知された。
◇NPO法の制定・施行。
◇行政・企業とNPOとの協働の本格化。
◇介護保険や自立支援法の制定・施行。
◇構造改革特区、指定管理者制度など、規制や官の独占が緩む。
NPOが地域の担い手になるために
まず、ボランティアやNPOが、地域の担い手になりきれていない理由。この問題から考えましょう。まだまだ実績が少ないこと。そして、継続して運営する力が不足していることだと思います。やりっぱなし、言いっぱなしで、終わっている団体もあります。中にはそもそも継続する意志がなく、自分たちのやりたいこと、関心のあることだけをやっている団体もあります。「できることを、できる人が、できるだけやりましょう」では、約束にはならず信頼はされません。大事な事だと思ってもらえても、パートナーにはなれない。
私たちは地域を良くするために、この地域が未来の世代にわたって引き継がれていくように、この地域をどうしたいのかの展望を描き、地域のニーズに応える。自分たちがこうしたいから、ではなく、地域で求められているニーズに基づいて活動していることが重要です。

これからの市民活動を展望する
では、NPOが地域に信頼され、地域のニーズに応え続けるために、どうすればいいのか。結局は、事業としてやり続けることだと思っています。「やりたいときにやりたいことをやりたいだけ」ではなく、しくみや品質に責任を持って事業として続けていくことで、次の担い手も育てていく。最近、コミュニティ・ビジネスや社会事業家といった市民事業に注目が高まってきているのはそのためです(全国事例:表3)。NPOにとっても、経済は非常に重要なテーマだと確認しておく必要があります。地域の経済の力が衰えていくと、課題は深刻化します。NPOが事業性を高めることは、社会的に意義のあるお金の流れをつくることでもあるのです。
もう一つ重要なのは、地域との連携です。「どうしても自分たちだけでやろう」という気持ちの強い団体が、増えている感じがします。せっかく地域に根ざした団体なんだから、地域を巻き込んで連携すれば、もっと地域ぐるみで応援してもらえます。地域のための活動だからこそ、地域の他の団体と積極的に連携して、一緒に何かやっていただきたい。
最後に、行政との協働について。これからも協働は広がっていくと思います。勘違いしてはいけないのは、官から民に仕事を下げ渡すことが協働ではなく、互いに今まで以上の効果が出る、1+1=2以上のことがちゃんと期待できるかどうかが大きなポイントです。協働とは、互いの強みを活かすことだからです。
行政は、協働の定義(協働とは何か)や基本戦略(どう進めるか)、展望(社会はどう変わるか)やスキル(協働を進めるチカラ)を持ったうえで協働することが不可欠です。コスト削減を目的にすると、重大な事故を起こし、責任を問われるのは行政であることを忘れてはなりません。
NPOはネットワークを強め、互いのノウハウを共有し、知恵を活かし合ってください。また、地域を本気で変えていこうと思ったら、制度や仕組みが変わらないといけない部分がありますが、NPOにはその働きかけも求められます。
今日は、日常よりちょっと長い視点で考えることを狙いにお話しさせていただきました。過去や未来の視点を持つと、「大変だな」と感じることも多いのですが、「だからこそ活動する価値があるんだ!」と思っていただきたい。忙しくなると現場にばかり視野をとられがちですが、そうではなく、視野を広げ、目線を上げて日常の活動を行っていただくきっかけになれば幸いです。ありがとうございました。

表2
●これからの15年(2007年〜2020年)
◇日本はGDPで何位?(他国に抜かれる)
◇極少子・極高齢社会へ→20年に高齢者率30%
◇首都圏・東海圏へ人口集中
◇団塊世代の一斉退職→退職金は払えるのか?(消費に回ればいいが・・・。)さらに介護や年金の対象に。
◇安易な民間委託→質とスピードを上げる前にコストを下げる?
◇本当に大変なのは、2008年!
・「緊急経済対策」で増発した国債の償還期限!
・過去の膨大なハード整備の補修期!
・新・非営利法人制度が施行!
・介護保険法、自立支援法など見直し→実質的には単価削減!
・指定管理者制度が第2ラウンドへ
・求人倍率は、相変わらず高い→介護系、国際協力系は空前の人材難
・大学全入→グローバル企業は海外採用を拡充
◇恐らく消費税3%増。2009年?
◇ISO26000シリーズ発効→CSR(企業の社会的責任)からSR(すべての組織の社会責任)へ
◇2010年には、社会保障制度全体見直し→特に年金、高齢者医療費など
表3
●コミュニティ・ビジネスの全国の事例
〜地域の資源を活かした事例〜
◇自然体験活動
・NPO法人ねおす(北海道)http://www.neos.gr.jp/
◇フィルム・コミッション
・NPO法人アジア・フィルム・ネットワーク(愛媛県松山市)http://www.asiafilm.info/
〜障がい者の力を活かした事例〜
◇ココ・ファーム・ワイナリー(栃木県足利市)
30度以上の斜面にブドウ畑を作り、沖縄サミットのオープニングを飾るスパークリング・ワインになった
http://www.cocowine.com/
◇スワンベーカリー(東京を中心に30店舗以上)
パン生地をチルド輸送し、各店舗で発売 http://www.swanbakery.jp/
〜地域の課題に挑むNPO〜
◇NPO法人不忘アザレア(宮城県白石市)
三セクからスキー場を継承し、黒字は市に寄付
http://www.wagamachigenki.jp/genki/report/040903-01.htm
◇NPO法人エコビジョン沖縄(沖縄リサイクル運動市民の会)
スーパーの生ゴミを豚の飼料に http://www.ryucom.ne.jp/users/kuru2/
〜地域を活性化した事例〜
◇YOSAKOIソーラン祭(北海道札幌市)
「不法行為」からスタートしたが、今ではオフシーズンに150万人の祭りに
http://www.yosanet.com/yosakoi/
◇オンパク(大分県別府市)
個人の趣味や一芸を地域共有のコンテンツに。他の地域にもASPとして提供。(函館など)
https://www.onpaku.jp/com/
〜地域の企業とのパートナーシップ〜
◇パック連参加団体による紙の循環
集めるだけでなく、使うリサイクル:Rマーク。
(全国パック連:http://www.packren.org/)
〜実はこれもコミュニティ・ビジネス〜
◇生活協同組合、有機農業運動団体
グリーンコープ(http://www.greencoop.or.jp/)は産地見学を年間350回以上!
生活クラブ(http://www.seikatsuclub.coop/)は「国連設立50周年記念賞」受賞!
創業は「安全な牛乳を飲ませたい」と願った母親たち 90年には100万世帯が加入→3000億円市場
◇介護保険制度を生み出した、たすけあい運動 78年にボランティアで24時間・365日の介護を、93年に「介護作業の170分類」を実現し、保険制度のモデルとなった「ケア・センターやわらぎ」
◇フリーマーケット、リサイクル・ショップ
家庭の不用品を「社会の資源」として循環

