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淡海ネットワークセンター(Ohmi Network Center for Voluntaly Organizations)
淡海ネットワークセンターは、地域や社会の課題解決に自主的に取り組むNPOや市民活動をサポートしています。

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10周年記念特集

 NPOの存在が広く知られるようになっておよそ10年が経ちました。これから新しい公共の担い手として期待されるNPOが継続・発展していくための組織運営のカタチを考えます。
 NPOとひと言で言っても、組織運営のカタチはさまざまです。ほとんどボランティアだけで運営されるところや、会費や寄付で支えられる活動、行政からの委託事業や、民間財団からの助成金を受けながら運営するところ、その複合型で運営しているところ。多彩な活動を展開するNPOは、資金の集め方も多種多様です。対価を得る事業を行うことが難しい活動や、委託や補助を受けながら、行政に代わってその役割を担っている場合など、その分野や内容、また、メンバーの思いなどによって、様々なタイプがあります。それらの中で、今回は、地域の多様な主体とのネットワークを築きながら、独自に生み出した事業で収益を得ながら社会の課題解決に取り組む、NPO法人ねおすの事例をとおして、団体を継続・発展させていく方法の一つ「市民事業」についてお伝えしたいと思います。


今回の特集は、情報交流誌「おうみネット」公開講座として
開催した内容からお届けします。

高木晴光(たかぎ・はるみつ)

NPO法人ねおす代表。北海道黒松内町にある自然学校に在住。会社員時代に自然に関わる仕事を経験し、それを生業にしたいと、ねおすを設立。他役職にNPO法人北海道NPOサポートセンター理事、日本エコツーリズムセンター理事、NPOバンク事業組合理事長など。モットー:「考えるだけのTHINK−TANK(シンクタンク)型じゃありません。 私はDO−TANK型人間です」。



大室悦賀(おおむろ・のぶよし)

京都産業大学経営学部専任講師。2007年度より淡海ネットワークセンターおうみ市民事業創出支援プロジェクトマネージャー


大室 NPO法人ねおすはどのような団体なのですか?

高木 自然体験活動を手法に、北海道で「環境」「観光」「教育」「地域作り」などを手掛けるNPOです。「人と自然の新しい関わり方、暮らし方を提案することで、持続可能な新しい社会づくりに貢献する」をミッションに、子どもから大人までの自然体験活動プログラムの企画・実施から指導者の育成、学習拠点作りまで自然体験活動を総合的にプロデュースしています。エコツーリズム(※)を通して、北海道らしい自然体験文化を育てたいと考えています。

※自然環境や歴史文化を対象とし、それらを体験し学ぶとともに、対象となる地域の自然環境や歴史文化の保全に責任を持つ観光のありかた。環境保全、観光振興、地域振興の効果が期待されている。


大室 ねおす設立までの経緯を教えてください。

高木 私は千葉県の出身ですが、幼少時代に訪れた北海道の印象が強く、大学の時に来た北海道でそのまま就職しました。その後転職し、健康産業に関わるスポーツクラブを運営することになり、初めてそこで子どものキャンプなどを企画実施する経験をしました。バブル崩壊で会社の経営が苦しくなる中、自分は本当は何がしたいのかを考えるようになり、社会教育に携わる専門学校に再度転職しました。その理事長の支援をもって「北海道自然体験学校NEOS」を立ち上げたのですが、不採算部門で整理されることになり、それを契機に独立しました。


大室 人生をかけた転身ですね。

 高木 そうですね。NPOではありますが、これで食べていく覚悟でした。

大室 なぜNPOだったのですか?

 高木 会社にするかNPOにするか、当初スタッフで話し合いました。その結果、社会性・公共性をきちんと訴えていく分野だと思い、NPOを選択しました。

大室 最初から事業で得た収入で運営を行うNPOだったのですか?

 高木 そうです。キャンプやエコツアーなどの参加者負担があって、その収入で事業を展開していました。

大室 立ち上げ時から運営はうまくいきましたか?

 高木 私たちの場合、専門学校の時の顧客を一定ねおすに引き継ぐことができました。経緯も丁寧に説明していましたので、大変だろうからと参加費を先に振り込んでくれたりと、借り入れはなくスタートできました。設立当初のスタッフ数は3名。日々なんとかやりくりしている状況で「赤ちょうちんに行こう」というのが最初の目標でした(笑)。  

大室 お金をとることに抵抗はありませんでしたか?

 高木 その辺りは割り切っています。ミッションの達成はとても強い意志と継続した行動によって実現されていくものだと思っています。参加費をとることが第一の目的ではなく、いただけるところからはいただいて、その分責任をもって、地域再生・環境保全など様々な課題解決に継続して取り組んでいきたいと思っています。

大室 事業はどのようにして広まってきましたか?

 高木 できそうな事業はどんどんやってきました。さまざまな課題を解決していくためには、同時に複数動かしていくことも必要です。動き出したらくい違ってくることもあるので、微調整はたえず行います。順序立てて頭で考えるよりもまずはやってみる。その積み重ねでしょうか。最初は今日は食べていける、といったところから一か月乗りきった、半年はやっていける、と見通しのつく期間が徐々にのびてきた状況です。

大室 市民事業型NPOの先進事例として有名なねおすさんですが、
   なぜここまでになったと思われますか?

 高木 はっきりこれだという要因は分かりませんが、ねおすは次の5つの方針を大切に活動を展開してきました。それをご紹介します。

(1)様々なネットワークで活動を展開していく。

これはねおすの重要方針です。他団体、地域や行政など、どこかとつながって事業を進めるようにしています。その理由は、さまざまな背景をもった人たちと関わることで、新しい価値に触れることができ、事業の可能性が広がっていくからです。例えば、地域の人や障がい者団体など異分野、異業種の団体や人と接点をもつことで、多くの気づきが生まれます。そこで、自分たちは次に何ができるかを考えることになり、そこから新たな事業が生まれてきました。自分たちでやるほうが早くて簡単なことも、あえて隙間をつくって様々な人が関われるようにしています。

(2)組織と個人のミッションのバランスを常に意識する。

さまざまな事業を展開していくと、組織と個人のミッションにずれが生じてくることがあります。ねおすでは、スタッフにまず「この事業やりたい?」と聞いて話しをします。その中で個人と組織のミッションを天秤にかけ、個人のモチベーションが低い時はやらない場合もあります。問いかけていく中で、個人のミッションが強くなり組織と違うものになってくることがあります。その時は、組織を別に分けていきます。「NPO法人北海道山岳活動サポート」がそうです。これはマイナスな事ではなく、役割分担が明確化されたことで、別組織になった後も互いに支援しあえる心強い存在になっています。

(3)「思い」が「思いこみ」にならないように、公開して思いの公共化を図る。

活動を続けていくと、思いがいつの間にか個人の思いこみに変わることがあります。これはとても危険です。われわれNPOは、社会や個人がよりよい方向に成長していくために活動をしますが、その方向を誤らないためにも、様々な人や団体と関わって、思いに公共性があるかたえず評価される場をもつことが大切です。

(4)人(スタッフ)を育てる。

これも重要方針です。ねおすは、最終的に社会に役立つ人を育てる、という目標があります。だから、ねおす自体を大きくしたいのではなく、そうした人がねおすから育っていって、これからの社会をつくっていってほしいと思っています。先ほど、できそうな事業はどんどんやってきたと言いましたが、これはスタッフのトレーニングにもなるからです。事業をきっかけに地域や異分野の人と接点がもてれば、個人の成長のチャンスがあるわけで、これはコストでは計れない効果があります。

(5)より現場に近いところに権限を移譲する。

常に活動を展開しているねおすの場合、トップダウン方式でやっていては現場が動きません。現場で判断してやっていくことは、個人のモチベーションをあげるとともに、育てることにもなります。そのため、過去様々な問題が起こりましたが、そうした時に備えて代表や理事が責任をとれる体制づくりをつくっておいて、スタッフを安心させながら細かい失敗を経験させる環境をつくることが大切ですね。組織が大きくなればなるほど、情報はすべて共有できないものと思っています。



大室 方針の端々から様々な人、団体とネットワークを
   もつことの大切さを感じますが何か根拠があっての
   ことですか?

 高木 私自身がさまざまな人と関わる中で自己開発されてきたという実体験があるからです。これまで何度となくカベにぶちあたってきましたが、そのカベを乗り越えてこられたのは立場の違う人との出会いがあったからで、ネットワークの良さを自分の中で実感してきたからです。

大室 ねおすのこれから目指されるところを教えてください。

 高木 スタッフがさまざまなかたちで独立していき、将来的にはねおす本部は小さくして、独立したところに事業を委託したり、独立先を総合支援していきたいと思っています。たとえ小さくても社会提案していく組織や人を増やしていき、微力ながら社会に貢献していきたいと思っています。

次号はいよいよシリーズ最終回。「市民活動 これから十年を予想する」をお届けします。

NPO法人ねおす紹介

住所:北海道札幌市中央区宮の森2条14丁目1-14
TEL:011-615-3923 FAX:011-615-3914
URL:http://www.neos.gr.jp/ e-mail:npo@neos.gr.jp

●代表:高木晴光
●設立:1997年(法人登記は1999年)
●活動内容:
 (1)自然体験活動(エコツアー・自然学校・環境教育など)
 (2)各種研修・講座・調査等の受託
 (3)人材育成(自然ガイド・自然体験活動指導者養成など)
 (4)他団体の運営支援
 (5)地域支援
 (6)起業支援 など
●会員数:◇正会員(個人24名、団体5団体)
     ◇一般会員は、現在関連する旅行組織の管理となり、約200名
     ◇賛助会員(個人45名、団体5団体) ※2007年10月現在
●スタッフ数:専従職員15名 (通年雇用)
●ボランティア:約200名
●2006年度決算:
・収入85,306,080円(事業収入86%、会費1%、寄付2%、補助金・助成金11%)
・支出81,417,718円(総事業費35%、その他管理費65%)
・繰越3,888,362円


●活動拠点図


●ネットワーク図

 〜夏の長期自然体験村(in黒松内ぶなの森自然学校)

期間:19泊20日(夏休み期間中)
参加料:小学生128,000円、中学生130,000円(交通費別途)
内容:釣り・川下り・磯の長距離歩き・自転車など海、川、森など自然を活かした活動を行う。この間に、黒松内の子ども達と交流する日、地域のお年寄りと交流する日などもあり。終日のんびりと過ごす日も数日取り入れている。


●市民事業について


〜市民事業とは〜

 コミュニティビジネスや事業型NPO、社会的企業など、色々な呼ばれ方をしますが、当センターでは“市民活動団体が、多様な事業からの収入を得て持続可能な仕組みをつくり、地域社会の課題を解決する活動”を「市民事業」と呼びます。

〜継続発展していく手段の一つです〜

 NPOが社会的課題を解決するために大切なマネジメント要素は、「人」「もの」「資金」「情報」の4つです。このうち市民事業は、多くの団体で課題とされている「資金」面について、社会的価値のある事業を展開しながら、併せて収入も確保していく点で、団体を継続・発展させていく手段の一つとして近年注目されつつあります。このタイプの良い点は、独自財源を確保できることで、常勤スタッフの雇用や他からの信頼を勝ち取ることになり、かつ、継続的な組織運営の基盤が構築できることにあります。


〜NPO法人ねおすのポイント〜

 高木さんの話を2点にまとめてみましょう。高木さんは異分野の人たちと意図してネットワークを広げています。この意味は異質な経験や価値観を持つ人々に出会うことで、新たな事業の創出や新たな自分の成長のきっかけを得られることです。この視点をリーダーに当てはめると、異質なものを受け入れる「懐の深さ」が求められます。一方異質なものとの交流はミッションの深化や変質の可能性を高めます。この視点は組織のミッションと個人のミッションとのバランスをとることが求められてきます。極端に個人のミッションが強くなるようであれば独立させることを考えることも必要です。つまり、単一の組織に固執するのではなく、社会的ミッションの達成のための多面的な組織戦略を考えるということです。

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