ページの先頭です。
本文をスキップしてメニューを読む

淡海ネットワークセンター(Ohmi Network Center for Voluntaly Organizations)
淡海ネットワークセンターは、地域や社会の課題解決に自主的に取り組むNPOや市民活動をサポートしています。

ここから本文です

10周年記念特集

 淡海ネットワークセンターは、昨年4月に設立10周年を迎え、記念特集を4回シリーズでお届けしてきました。いよいよ今号が最終回です。今号は、市民活動を取りまく3セクター(NPO・企業・行政)より、それぞれの立場でこれから10年を展望していただきました。社会全体がどのように変わっていくのかを探りながら、皆さんの今後の活動の展開に役立てていただければと思います。


市民活動 これからの10年を展望する

シーズ=市民活動を支える制度をつくる会
松原明(まつばら・あきら)

シーズ=市民活動を支える制度をつくる会事務局長。1960年大阪生まれ。神戸大学文学部卒。広告制作会社、フリーの経営コンサルタントを経て、94年から現職。NPO法、認定NPO法人制度の立法活動を推進。著書・共著に「NPO法人ハンドブック」「NPOがわかるQ&A」など多数。


 今、「市民活動のこれからの10年」について、三つのシナリオが議論されている。
 発展、停滞、衰退の3つである。
 1990年代初めに、冷戦が終結し、政府の役割が後退していったとき、福祉や国際協力、環境保全など様々な分野で、多様な市民活動が一斉に成長していった。95年の阪神淡路大震災では、ボランティア・市民活動の活躍に脚光が集まった。98年にはNPO法ができ、その後3万を超えるNPO法人が誕生するに至っている。
 その間、「新しい雇用の担い手」「社会変革の推進役」「コミュニティビジネス」などの新しい言葉が踊ったものだ。
 しかし、現状では、期待されたほどの成長もできず、言われたほどの雇用を生み出しておらず、大きな変革の主役にもなりきれていない。介護保険等の制度の変更や、委託事業、補助金に振り回されて、むしろ政府の下請け化していて期待を裏切っている面もある。
 このような面を見、新しい動きが見えないことから、「停滞」が続くと見る人は少なくない。
 むしろ、しばらくは「衰退」局面に入りつつあるという人もいる。
 NPO法人の7割以上は、財政的課題を抱えており、解散する法人も増加してきている。
 国・自治体の財政難から、委託事業、補助金などのコストカットが進み、経営難に陥る団体が増えてくるのはという予測がある。さらに、公益分野への企業の参入が一層進み、競争力に劣るNPOには厳しい状況になるという見方もその背景にある。
 一方で、「発展」のシナリオを描いている人の間では、共通ビジョンは不足しているのが現実だろう。「市民活動は大切だから」という理念的な考えが、「これからも発展するはず」という楽観論を支えているようだ。
 しかし、実際には、発展のチャンスは確実に拡がっている。政府の昨年発表の世論調査によると、市民活動を重要と思う人は国民の八割を占め、活動に参加したいと考えている人は四割を超える。また、NPOに寄附したいという人も二十三%を超えている。企業もCSR(企業の社会的責任)活動から、NPOとのパートナーシップを強めてきている。
 視線を市民活動の周囲に転じると、着実な変化が起こっているのである。
 市民活動の現状を見るのではなく、環境の変化を見、それに適切に対応さえできれば、人々のさらなる支援と参加が期待できる。
 そのためには、市民活動自体の「変革」が今求められている。
 もっと、社会に参加したいという人々の方を向き、自分で課題を解決することから、課題を解決する仲間を増やすことに、活動の焦点を切り替えるべきである。それができれば、市民活動の前には、成長を可能にする肥沃な大地が広がっているのが見えるだろう。ただ、その「変革」は、待っていてもこない。起こすべきものである。
 これからの10年は、市民活動自身の新しい変革へのチャレンジの10年となる、というのが私の考えである。

社会課題の解決に向けた「企業とNPOの協働」を展望して
―NPOの社会的責任として、
   キャパシティビルデイング(基盤強化)への期待―



松下電器産業株式会社 
社会文化グループ
菊池健(きくち・たけし)

1978年、松下電器入社。生産システム・生産自動機・金型などの開発を担当し、その後、労働組合専従として組合員教育を主に担当。1993年より現在の企業市民活動の専門部署に就き、バリアフリー/ユニバーサル製品開発の社内外への啓発・推進、NPOとの各種の協働プログラムの開発、NPOの基盤強化基金(Panasonic NPOサポートファンド)の立上げ、ユニバーサルデザイン推進部門やCSR推進部門の立上げを行う。


 「NPOとのパートナーシップ」という言葉が登場し出したのは1990年代の半ばからであり、現在は「NPOとの協働」という言葉が使われている。
 2003年頃から、企業はCSR活動に着手し、企業によっては、それまで取り組んでこなかった「企業市民活動/社会貢献活動」を開始するところも多々登場し始めた。同時に企業市民活動の推進において、新しい役割を求められ始めたのが市民活動団体・NPOである。NPOの持つ先駆性、専門性に期待し、企業市民活動のパートナー(協働先)となりだした訳である。
 企業とNPOの協働は、専門的な分野で活動しているNPOと、資金・人材・技術等を持った企業が相互に得意分野を提供しあい、新しい社会課題を解決していく形が理想ではあるが、現実的には資金調達に苦慮しているNPOに企業が資金や機材等を提供している支援形が大半である。一部には汗をかくのはNPOであり、企業市民活動のアウトソーシング的役割をNPOが担う場合も見受けられる。
 当社は、1990年代前半からNPOと協働した活動を進めてきたが、NPOのマネジメントの実情を危惧し、2001年にNPOのキャパシティビルディング=基盤強化(ガバナンス・戦略的計画作り・財務管理/資金調達・人材開発・労務管理・広報等のマネジメント能力向上等)の為の助成金「Panasonic NPOサポートファンド」をスタートさせた。真に協働できるNPOが少ないという実態、事業助成金の活用で疲弊していくNPOもあり、NPOのキャパシティビルデイングを目的とした助成金の必要性を感じたからである。事業助成が多い中で、当時も今も他に類を見ないプログラムであるが、その理由は「キャパシティビルデイングには時間がかかり、その成果も見えにくい」ということであろう。又、さらに昨年度から、NPOのマネジメントをサポートする人材の増強、マネジメントスキルをもつスタッフの強化を支援するプログラムにも、力点を置きだした。また、キャパシティビルディングの成果が現れだしたNPOへのヒアリングも開始した。   
「キャパシティビルディング」という言葉自体も、まだ緒についたばかりであるが、NPOと企業の協働の視点から今後を展望したときにNPOセクターにとって重要なことは、自らの組織のキャパシティビルディングのチェックとその充実であろう。
 ここ十数年、NPO・市民活動の現場を見てきて感じるのは、やはりNPOにとって重要なことは(企業と同様であるが)「熱意」と「組織基盤・マネジメント」のバランスであろう。熱き心だけでは活動の持続可能性は有り得ない。企業だけでは解決できない社会課題が多い中でNPOの力が大いに期待されているだけにNPO・市民活動団体の組織基盤・マネジメントがより充実し、更に多くの社会課題を共に解決していける時代の到来を期待したい。

公共サービスと公共の意志決定が激変する


神奈川県職員
特定非営利活動法人パブリックリソースセンター代表理事
久住剛(くすみ・つよし)


1980年明治大学卒業。1999年ニューヨーク大学ロバートF.ワグナー校公共政策・NPOマネジメント修士課程修了。神奈川職員としての勤務のかたわら、日本ネットワーカーズ会議、市民セクター支援研究会などの場で、市民活動、NPO支援システム、行政とNPOの協働、企業の社会性(CSR)等に関する調査研究及び実践に長年携わる。1986年自治体学会創設に参画。1996年日本NPOセンター創設に参画。横浜国立大学非常勤講師(2007年〜)、自治創造コンソーシアム常務理事などを務める。共著書に『NPO基礎講座』『パブリックリソースハンドブック』『SRI社会的責任投資入門』など。


■創造は10年単位で
 日本でNPOという言葉が聞かれるようになったのは、1980年代半ばのことです。その後、新たな社会システムとしてNPOを日本に生み出そうという運動が展開され、約十年を経て実現しました。その後の十年でNPOは日本に定着しました。これからの10年で、NPOは人々の生命を支え、社会を動かす中核となっていくでしょう。もともとNPOは社会を創造し、変革していく市民活動の「器(うつわ)」として構想されたものなのです。
 ここでは、地方行政や地方政治の変化を読み解きながら、市民活動に基礎をもつNPOのこれからの十年を展望してみたいと思います。

■公共サービスの提供主体
 地方行政の今後十年の変化は、極めて大きなものになるでしょう。公共サービスの提供はさらに「外部化」が進みます。役所が直接行うサービス提供はほとんど無くなるでしょう。役所は、公共サービスの企画や公的資金の提供、あるいはコーディネートという役割を担うことになります。サービス提供は、外部すなわち企業やNPOがそれを担うようになります。
 市民活動に基礎をもつNPOは公共サービス供給の中心的な存在となっていくでしょう。もちろん、新たなサービスの企画や改善にも、現場のNPOからの情報提供や提案は不可欠となります。受益者である市民の声を、NPOが代弁し、役所にそれを伝えるパイプ役となるわけです。
 例えば、お年寄りへの福祉サービスを想定してみてください。サービスの基礎となる財源は自治体から公的な資金が提供され、サービスの中身については、NPOと行政が相談しながら企画を練り、NPOが実施していくことになるでしょう。

■アドボカシーの主体
 政治とは、公共の意思決定の仕組みです。この意思決定の仕組みが、この先10年で大きく変わっていくことが予想されます。これは、インターネットの爆発的な普及が背景にあります。現在のような選挙や代議制ではなく、主権者である市民の意思がよりダイレクトに表明され、意見集約や意思決定もインターネットによって行われるようになるかもしれません。現在の代議制が残るとしても、電子的なネットワークにおける意思表明を無視できなくなります。そうした中、市民活動やNPOは、公共の意思決定に際して必要な情報や意見を提供する役割を担うようになります。これは、公共サービスや政策を企画・決定するプロセスの中で「アドボカシー」(実践を伴う政策提言)と呼ばれる機能です。アドボカシーはNPOの「社会創造」「社会変革」の機能として不可欠なものとなっていくでしょう。
 例えば、NPOは、現場のお年寄りのニーズ分析を基礎に、先進的なサービスに関する情報を収集し、新たな福祉サービスを議員や市長に提案し、議会では新たなサービスが条例化され、新規に実行されるようになるでしょう。
 このように公共サービスとアドボカシーが市民活動やNPOの10年後を変えていくのです。


事務局まとめ

 この1年間を通してシリーズでお届けしてきた「これからの市民活動を考える」。市民活動の過去から現在、そして未来をみてきました。
 10年前に比べ、市民活動の環境は大きく変わりました。市民活動に対する社会的な認知は高まり、必要性が認められ、市民活動を実践する人が増えてきました。また、資金や物品提供など何らかの形で市民活動を応援したい人も出てきています。
 一方、市民活動の外に目を向けても、変化は確実に起こっています。行政は、これまで直接担ってきた住民サービスの一部を企業やNPOなど民間に移行するようになってきました。また、企業は、「企業市民」という言葉でも表されるように、利益追求だけでなく社会的な責任に向き合う姿勢で事業に取り組むようになってきました。こうした中、行政や企業は、協働の相手として当事者性や先駆性をもった市民活動に対して期待を持っており、市民活動団体の活躍の場は確実に広がってきています。
 このように市民活動をとりまく環境は着実に変わる中、これからどのように市民活動をすすめていけばいいのでしょうか。
 社会や地域と密接に関わりながら活動を展開している市民活動団体は、周りの環境の変化や社会の動きをしっかり見据えながら、自らの団体の強み・弱みを整理して、他の人や団体にも目を向けて活動を展開していくことが求められています。これまでのシリーズ企画を通して、さまざまな立場から市民活動のこれからを展望してきましたが、共通していたのは、「単体で取り組むだけではなく、他の人や団体と連携して取り組んでいくことで課題は解決されていく」という視点です。それが、結果的に地域や社会の多様な思いがカタチになり、市民社会が実現していくために必要なのではないでしょうか。
 社会を良くしていくための取り組みはNPO・企業・行政、個人・組織の枠を超えて、今、互いに協力し始めてきています。これは、「社会を良くしていきたい」という思いはみな同じだからです。
 淡海ネットワークセンターは、そのための情報提供や事業展開を通して、地域のさまざまな主体をつなぐコーディネーター役として、また、皆さまのサポーターとして、これからも尽力していきたいと思っています。
 最後に、淡海ネットワークセンター設立10周年を記念して、これまで滋賀で市民活動を実践してこられた方の思いに焦点を当てながら、魅力的で活力ある滋賀の市民活動を展望する本を近々発行する予定です。これをお読みいただき、「これからの滋賀はおもしろくなる」とお感じいただければ幸いです。



おうみネット第62号表紙へ>>   バックナンバー>>


淡海ネットワークセンター(財団法人 淡海文化振興財団)
〒520-0801 滋賀県大津市におの浜1-1-20(ピアザ淡海2F) 電話 : 077-524-8440 ファックス : 077-524-8442