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| 「現代社会とNPO」 |
| ー第2回ー |
近江商人と企業フィランソロピー
| 近江商人として財をなした中井源左右衛門の家訓に、「陰徳善事をなさんより全別儀候はず」という言葉があります。初代中井源左右衛門は、今から200年以上前の18世紀後半に活躍した人ですが、短期的な商売の利益にだけ目を向けるだけでなく、商いで得た利益を地域社会に還元し、長期的視野で商売の環境を整えることが必要であると子孫に説いたのでした。近江商人の家訓を調べると「陰徳善事」に類した言葉が多く表れています。これらをまとめて、近江商人は、「売り手よし、買い手よし、世間よし」という「三方よし」の精神を実践しようとした商人類型であるという評価がなされています。 企業フィランソロピー(企業による社会貢献活動)の我が国における源流をたどると、一つには近江商人の「陰徳善事」や「世間よし」という考え方にさかのぼることができるといえましょう。 さて、フィランソロピーとは、公益の増進をめざした民間の非営利活動を指します。そして今日、個人だけでなく企業も、フィランソロピーの重要な担い手として位置づけられるようになってきました。 確かに企業は、社会的に必要な財やサービスを供給する事によって、利潤を追求することを目的とした組織です。しかし利潤のみを追求する企業像は大きく変更を迫られてきました。すなわち企業の占める社会的な大きさにつれて、企業は株主(シェアーホールダー)の利害のみを考慮に入れるのではなく、多くの利害関係者(ステイクホールダー)に対して責任を果たさなければならないと考えられてきたのです。利害関係者とは、消費者や取引先だけでなく、従業員やその家族、地域コミュニティ、地方自治体等です。さらに、利害関係者を超えて、社会全体の健全な発展に貢献する事が、企業の存続にとっても必要だと考えられるようになってきています。環境問題への企業の各種の取り組み等は、その典型的な活動であるといえましょう。今日多くの企業で、財団をつくり、寄付を行い、ボランティア休暇制度を導入する等、様々な形でフィランソロピー活動が行われるようになってきました。 しかし「陰徳善事」だからといって、人知れず行わねばならないという訳ではありません。個人のフィランソロピー活動は、人知れず行うのが望ましいのかもしれませんが、企業の場合は事情が異なります。企業がフィランソロピー活動を行う際には、少なくとも株主と従業員に対して、どのような目的で何を行うのか、情報を公開して十分に説明を行い、アカウンタビリティを果たすことが必要とされるからです。これが今日流の「陰徳善事」なのです。 |
| 北村 裕明(きたむら・ひろあき) 滋賀大学経済学部教授 (財)淡海文化振興財団運営会議 座長 1953年石川県生まれ。1981年京都大学大学院経済学研究科博士課程修了。京都大学博士(経済学)。滋賀大学経済学部教授。財政学、地方財政論担当。著書に「現代イギリス地方自治の展開」(共編著、法律文化社、1993年)、「現代の財政」(共著、有斐閣、1996年)など。 |
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